「TOB」とは、「Take-Over Bid」の略で「株式公開買付け」などともいい、企業の合併・買収(M&A)の手段の一つです。対象企業の発行済み株式の3分の1を超えて取得すると株主総会での特別決議の拒否権が、また過半数を超えて取得すると経営権が取得できることから、対象企業の株式を買い集めることにより傘下に収めるというわけです。
対象企業の株式を買い集めるには、通常と同じように株式市場を通じてコツコツ買い占めることも可能ですが、この「TOB」は証券取引所を通さずに行うのが特徴で、「不特定かつ多数の者に対し、公告により株券等の買付け等の勧誘を行い、取引所有価証券市場外で株券等の買付け等を行うこと」と定義されています。つまり、買収対象の企業の株式を集めるために、発行済み株式数の3分の1や過半数などに達するための株数を一定の株価で買付けることを公表し、公開買付期間、買付価格、買付予定株式総数などを提示します。
市場の価格より低い買付価格で募集しても株主は応じてくれず、応募が目標株数を超えなければ買収は失敗ということになりますので、多くの投資家から株を集めたい場合は、その時の株価にプレミアムが上乗せされたものになるのが通常です。買付価格の方が株価よりも高ければ、株式市場で安く株を買って、その株でTOBに応じることで利益を出すことができますので、株式市場に買いが殺到して急上昇するケースも多くあります。しかし買付価格以上に株価の方が上がってしまうと、今度は逆に、TOBに応じるよりも株式市場で売ったほうが得することになり、買収がうまくいかなくなる可能性もでてきます。そういうさまざまな思惑や駆け引きによって株価が激しく上下する事が多くあり、うまくいかない場合にはTOBの買付価格を更に引き上げたりする場合もあります。
日本では、対象となる相手企業などからの承諾を得た上でTOBが実施されるケースが多く、「友好的TOB」などといったりもしますが、それとは逆に、「敵対的TOB」というのも存在し、相手企業の合意なしに突然TOBを発表します。TOBが行われる際には、短期的な動きだけではなく、経営陣が変わることで将来の経営にどのような影響がでるのかを考えてみることも大切です。