「自社株買い」とはその名の通り、会社が自社の株を買うことを指します。過去に発行した自社株を買い戻し、消却して発行済み株式数を減らすことによって、「資本効率の改善」や「株主利益の向上」などに寄与することを目的としています。自社株買いは、発表後に株主総会での決議を経てから行われるのが一般的で、その後も「×月×日~○月○日まで市場で買付けを行いました」というように取得状況などが公表されます。
かつて自社株買いは、資産の減少につながるなどの理由から債権者を保護するため商法によって禁止されていましたが、1994年に消却目的、1997年にはストックオプション目的の自社株買いが認められるようになり、2001年にはさらに規制が緩和されて「金庫株」(自社株を取得しても消却せずにそのまま保有する株)が解禁となり、目的を制限せずに自社株買いが可能になったことから、自社株買いの数が急増しました。
この金庫株の解禁による自社株買いの増加には「持ち合い株」が大きく影響しています。持ち合い株とは、同じ企業グループ内や取引関係にある企業同士がお互いに持ち合っている株式の事を指し、互いに経営に口出しすることなく株を保有し合うことで株主を安定させ、企業買収されることを防いでいました。しかし、銀行の不良債権処理など、資産効率の改善や時価会計の導入で、株価下落によるリスクを避けて保有株を手放す動き(持ち合い株解消の売り)が加速し、そういった持ち合い解消売りの受け皿としても自社株買いが行われました。
最近では持ち合い株解消の売りもピークを過ぎ、一方で株主還元策としての前向きな自社株買いが増えています。自社株買いが発表された際には、それが消却目的なのかストックオプション目的なのかなど、どういった理由で実施されるのかに注目してみましょう。